赤い夕顔の花が咲いた


  赤い夕顔の花が咲いた25


「私は、殿様の身近にいたので、
殿様の良い所も悪い所も知ってお
ります。



領民や家臣たちから、殿様のこと
を聞くたびに、なぜ領民のことを
思いやることができないのだろう
と、残念に思いました。
もう少し領民のことを考えてほし
い、そう思いました」



「犬坊、なぜそういってくれなか
ったのじゃ」
「私がいうべきことではありません。
私は、領民のことを考えられる心
のやさしい殿様になれますように
と、毎日祈っておりました」



「わしのことを、そんなふうに祈
ってくれていたのか。ありがとう」
「さあ、殿様。少しお休みください」
疲れていた盛永は、いびきをかい
て眠ってしまいました。
犬坊も、盛永のそばで横になりま
した。


            つづく



「赤い夕顔の花」は、信州の最南
端にあった「権現城」に伝わって
いる話をヒントにして、みほようこ
が書いたもの。