赤い夕顔の花が咲いた


 赤い夕顔の花が咲いた35


でも、大声で返事をするわけには
いきません。
「ここですよ。私たちは、ここに
いますよ」
お万は、心の中で何度もさけびま
した。



「幼いこどもをつれているから、
遠くへは行くまい。
どこかにかくれているのだろう。
早く三人をみつけろ」
近くで、兵士たちの声が聞こえま
した。



お万と長五郎は、木のしげみにか
くれました。
「お母さま」
「長五郎。だいじょうぶですよ」
お万は、長五郎をぎゅっとだきし
めました。



長五郎は、ぶるぶるふるえています。
「こわかったのね。かわいそうに」
お万は、長五郎を再びしっかりだ
きしめました。


            つづく



初めてこの物語を読んでくださった
 かたへ


     赤い夕顔の花が咲いた1


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20080805#p1



「次の日」「次の日」と押せば、
「赤い夕顔の花が咲いた」を続け
て読むことができます。



「赤い夕顔の花が咲いた」は、
信州の最南端にあった「権現城」
に伝わっている話をヒントにして、
みほようこが書いたもの。