瑠璃寺の青獅子13
小屋へもどると、木の前にすわり、
何度も深呼吸をしました。
「獅子よ。これから、荒彫りを始
めるぞ」
男は、木を彫り始めました。
「こっ、こっ、こっ」
木を彫る音だけが、小屋にひびき
ます。
のみが切れなくなると、滝へ行き、
滝に打たれます。
そして、滝にかかる虹をみながら、
一心にのみを研ぎました。
すると、ざわざわしていた心が、す
ぅーと静かになりました。
男は、寝る間もおしみ、夢中で獅子
頭を彫りました。
いつ食事をしたのか、いつ寝たのか、
すぐには思い出せないほどでした。
つづく
前回の分は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20101016#p1
初めて読んでくださったかたへ
http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20101005#p1
「瑠璃寺の青獅子」は、信州の伊
那谷にある「瑠璃寺」に伝わって
いる話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。
物語の無断転載・再配布を禁止し
ます。