瑠璃寺の青獅子


   瑠璃寺の青獅子18


男は、彫りあがった獅子頭を、
不動明王に供えました。
男は滝へ行き、身を清めました。
そして、獅子頭をもって、滝の
上の方へ登っていきます。
適当な岩をみつけると、獅子頭
をその上へおきました。



男は、獅子頭をくいいるように
みています。
どのくらいの時間がすぎたので
しょうか。
和尚には、長い時間がすぎたよ
うに感じました。



突然、男が大声でさけびました。
「だめだ。この獅子頭は、生きて
いない。
わしは、木の中に眠っている獅子
を、目ざめさすことができなかった。



何カ月も一心に彫ったけれど、生き
ているようにみえる獅子頭は彫れな
かった」
そうさけぶと、男は滝つぼにむかっ
て、獅子頭をなげました。


             つづく



    前回の分は、こちら。


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20101021#p1



    初めて読んでくださったかたへ


http://d.hatena.ne.jp/dowakan/20101005#p1



「瑠璃寺の青獅子」は、信州の伊
那谷にある「瑠璃寺」に伝わって
いる話をヒントにして、みほようこ
が書いた物語。


物語の無断転載・再配布を禁止し
ます。