火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 59


湖を泳ぐ娘 5


「無事に、湖をわたり終えますように」と
祈りながら。


「次郎さん、こんばんは」
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かった
ね。どうしたの」
「私、湖を泳いできたの」
「えっ、湖を?」
次郎は、驚いて聞きました。


みると、きよの髪から、しずくがぽたぽた
とたれています。
「私、一分でも早く、次郎さんに会いたか
ったから、湖を泳いできたの」
「きよちゃんが泳ぎが達者だということは、
おらも知っている。でも、夜中に湖を泳ぐ
なんて危険だ。深みにはまって、おぼれた
らどうするの。死んでしまうよ。きよちゃ
ん、むちゃなことはしないでね」
次郎が心配していいました。


       つづく