火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 92


新しい出発 21


「やはり、きよは何もおぼえていないのです
ね。自分の名前も、大好きだった次郎のこと
も、みんな忘れてしまったなんて。かわいそ
うに」
手長は、きよの気持を思うとやりきれません。


「手長、足長。そういうわけなので、きよが
眠っている間に、静岡までつれていってほしい」
「はい、わかりました」
手長と足長は、ぐっすり眠っているきよを、
静岡までつれていきました。


次の朝
「きよ。目がさめたか」
「はい。あなたは?」
「わしは、足長じゃ。そして、こちらが手長」


         つづく