稲のしずく


「稲のしずく1」


七月のある朝。
校長先生は、いつものように校門の前に立って
いました。
「校長先生、おはようございます」
「おはよう、ひろし。かぜはよくなったかな」
「はい、よくなりました」
「まゆ、おはよう。おかあさんの具合はどうかな」
「先生、かあちゃんは昨日退院しました」
「そりゃ、よかったね」
校長先生は、こどもたち一人一人に声をかけます。



そこへ、かなが走ってきました」
「校長先生、校長先生」
「かな、おはよう。どうしたの?」
「あっ、おはようをいうのをわすれちゃった。
校長先生、おはようございます」
「いそいでいるが、なにごとかな」



「昨日夕方、りゅうと散歩にいったの。
田んぼの稲をみていたら、その稲の葉にしずく
がついて、しずくがだんだんに大きくなったわ。
でも、そのしずく、なぜか道の右側の稲の葉に
しかついていないの。校長先生。ふしぎでしょ。
なぜ、片側の稲の葉にしか、しずくがつかない
のかしら」
「さあ・・・なぜだろうね。ふしぎだね。
先生も、そのしずくをみたいな。夕方、一緒に
しずくをみにいこう」
「わー。うれしい」
かなは、夕方になるのを、楽しみにして待って
います。



その日の夕方。
かなは、校長先生と一緒に、昨日のたんぼへい
そぎました。もちろん、愛犬のりゅうも一緒です。
りゅうはうれしそうに、しっぽをふりながら歩い
ています。
「かな、私がプレゼントした桜の鈴、大切にして
いるかな」
「はい、大切にしています」
「前にも話したように、あの鈴はしずかに七回ふ
ると、花や小鳥とお話ができるのだよ。
でも、ほんとうにやさしいきもちをもっている時
しか、話はできないけれどね」
「私ね、りゅうと時々話をするの」
「そうか、りゅうと話をしているのか」
「花や小鳥とは、話をしたことがあるかな」
「あまりありません」
「かなは心のやさしいこどもだから、だんだんに
花や小鳥と話ができるようになるよ」
「早く小桜姫さまのように、花や小鳥とお話がで
きるようになりたいわ」


        つづく


みほようこの三冊目の本・「ふしぎな鈴」のつづき
をいつか書きたいと思っています。


「ふしぎな鈴」は、小学校高学年以上のこどもたち
に読んでいただきたいと思い作りました。
しかし、つづきとなると、こども向けでは無理なの
かな・・・と思ったり。 まだどちらにするか、き
まりません。


ふしぎな鈴は、昨年九月、
http://www.choeisha.com/から、
発行されました。



ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)