ふしぎな鈴「小桜姫とふしぎな鈴」の章 


ふしぎな鈴「小桜姫とふしぎな鈴」1


今からおよそ五百年前。
小桜姫は、相模の国・鎌倉で生まれました。
姫の生家は、大江といいます。大江家は大昔から
ずっと続いた旧家でした。
大江家には男の子が一人もなく、こどもは姫だけ。
大江家にとって、姫はたった一人の大切なこども
でした。



その頃の鎌倉は、武家やしきが建ちならぶ、物静
かな町でした。
そんなやしきの中でも、大江家は立派な門構えの
大きなおやしきだったのです。



姫が生まれた時、庭の桜が美しく咲いていたので、
「小桜」と名づけられました。
やしきの広い庭には、桜・梅・椿など、たくさんの
木が植えてあります。
その木へ、いろいろな小鳥がやってきます。



梅の花が何輪か咲き始めた春のある日。
「ホ…ホー…」
「ケキョ…、…ケキョ」
庭で小鳥が鳴いています。
「おとうさま、おとうさまー」
姫が、大声でおとうさんをよんでいます。
「おとうさま、あの鳥は何という鳥?」
「姫、うぐいすだよ。じき上手に鳴けるようになる
から、そこで聞いていてごらん」
おとうさんがいいました。



「ホー…ケキョ、…ケキョ」
「ホーホ…、…ケキョ」
しかし、うぐいすはなかなかうまく鳴けません。
「うぐいすさん、がんばってぇ」
姫は、心の中でうぐいすをおうえんしました。
「ホーホケキョ、ほーほけきょ」
しばらくして、うぐいすは上手に鳴けるように
なりました。
「わぁ、いい声。うぐいすさん、じょうずに鳴
けるようになってよかったね」
姫は、うぐいすに話しかけました。
うぐいすもうれしそうです。


               つづく





      「花のほほえみ」より ふしぎな鈴



リーン・リーン・リーン…。
500年の時をへて、心やさしい小桜姫と現
代の少女を結ぶ、美しい鈴の音が聞こえる。
風の神様が、そっと教えてくれたお話。



「ふしぎな鈴」は、みほようこの三冊目の本。
昨年九月、http://www.choeisha.com/
から、発行されました。



http://www.geocities.jp/dowakan/douwasyuu3.html



ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)

ふしぎな鈴 風の神様からのおくりもの (3)