竜の姿をみた少女


     竜の姿をみた少女5


「となりのかなちゃんは、しらかば湖に竜がいると
信じているようだわ」
「この世に、竜なんているはずないのにね。何を馬
鹿なことをいっているのかしら」
「そういえば、かなちゃんのおとうさんも、湖に竜
がいると信じているみたい」
「ほんとにおかしな親子だねぇ」
村の人は、どの人も「竜なんかいない」と思ってい
ました。 



山深い村にも、ようやくあたたかな春がやってきま
した。
湖のほとりでは、空色のいぬのふぐりの花が咲き始
めました。かなは、いぬのふぐりの花が大好き。
「かな、この空色の花はね、いぬのふぐりという花
だよ。かわいい花だね。空のお星さんが、草むらで
かくれんぼしているみたいだね。いぬのふぐりの花
は、きびしい寒さの中で、春一番に咲くんだよ」
なくなったおかあさんが、教えてくれた花でした。


つづく


「竜の姿をみた少女」は、みほようこの二冊目の
童話集・「竜神になった三郎」の続編。



竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)

竜神になった三郎 風の神様からのおくりもの (2)



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