火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 57


湖を泳ぐ娘 3


「私には、きよの気持が、よくわかるわ。
危険をおかしてまでも、一分でも早く、大
好きな人に会いたいという気持。男のあな
たには、わからないでしょうね」
手長がいいました。


「わしにだって、わかるさ。でも、こんな
夜中に、湖を泳いで渡るなんて危険すぎる。
深みにはまったら、どうするんじゃ。諏訪
湖には、深い淵になっている場所があるか
らのぅ」
足長が、心配していいました。


「達者な泳ぎだから、深みにでもはまらな
い限り、大丈夫でしょ。魚が泳いでいるよ
うな、みごとな泳ぎね」
きよの泳ぎをみて、手長が感心したように
いいました。


         つづく