火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 62


湖を泳ぐ娘 8


その後。
きよが、次郎の所へたどりつく時間が、だん
だんに早くなりました。
会うたびに、十分二十分と、早くなっていっ
たのです。


「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね。
いつもより早く家をでたの」
ふしぎに思い、次郎が聞きました。
「いつもと同じ時間よ」
きよは、そういいました。
でも、いつもと同じ時間であるはずがない。
きよちゃんは、いつもより早く家をでたのだ
ろうと、次郎は思いました。


「きよちゃん。どうやったら、こんなに早く
ここへこられるの」
「私、次郎さんと会う日には、無事に次郎さ
んの所へたどりつけますように。一分でも早
く、次郎さんに会えますようにと、心の中で
祈るの」


           つづく