火とぼし山

[童話]火とぼし山


火とぼし山 91


新しい出発 20


「夜遅くにもうしわけない。これから、きよ
を静岡の知り合いまでつれていってほしい」
「えっ、きよを、静岡へつれていくのですか」
手長が驚いて聞きました。


「そうじゃ。きよは、自分の名前も、大好き
だった次郎のことも、何もおぼえていない。
記憶がなくなってしまったきよを、ここへお
いておくわけにもいくまい。きよが生きてい
ることを知ったら、次郎が何をするかわから
ないしな」
明神さまがいいました。


        つづく