火とぼし山


    湖を泳ぐ娘 24


「きよちゃんは、いつもそんな
ふうに祈っているの」
「祈っているわ。次郎さんのこ
とも、元気で暮らせますように
と、毎日祈っている」



きよのことばを聞き、次郎は思
いました。
おらは、暗い夜道を、何時間も
かけて訪ねてくるきよちゃんの
ことを、一度でも祈ったことが
あっただろうかと。



「次郎さん。私ね、湖を泳いで
いると、魚になっちゃったのか
なって、思う時があるの」
「魚になる?」


       つづく